少し前の『乙嫁語り』を読み返していた。
お風呂屋さんで「わたしは寂しかったんだわ」と言うアニスにシーリーンが「あなたずいぶん話せるようになったのね」と驚くシーンを見て、
「うわこれ自分だ」
と思った。
私の職場は人数が少ない。
地元を離れているし、近くに知り合いもいない。
休日に人に会うことはない。
ということで、人と「なんとなく」話す機会が圧倒的に少ない。
入社して数年は「退屈だ」と思っていたが、今やそれが当たり前になってしまっている。もう退屈だとか言う気力もない。
職場で雑談するのは難しい。共通の話題がない。それに相手は上司だ。上司しかいない職場でなにか適当に話そうという気にはなれない。
もともと人と話すのが苦手だが、その上にそんな環境で生きてきた結果、話す習慣がほぼなくなった。
たまに友達と会っても、話すべきことが見つからない。
人に話していいこと、わざわざ話すことが思いつかない。
「なんでも思いついたことを話せばいいじゃん」と思う人もいるだろうが、そもそも何も思いつかない。
話すことに関する筋力の低下が著しいので、どんなことなら口に出していいのか、口に出すべきなのか、何もわからない。
習慣というのは恐ろしい。
退屈で寂しいという自覚はある。でもどうにかする手段がない。